お客様がいるのに、仕事を受けられない――人手不足の店から考えること
人手不足倒産が年度上半期に240件。飲食店の報道と調査をもとに、売上、利益、働く人の負担を一緒に考えます。
繁盛していれば安心、とは言い切れない
お客様に来ていただける。それは、お店にとってうれしいことです。それでも、人が足りなければ注文を受けられない。10月11日のTBSの報道で紹介された飲食店では、店主が人手不足を補い、混雑時には来店客を断ることもあると説明していました。
経営の難しさは、売上の数字だけでは分からないものです。仕事があることと、その仕事を無理なく続けられること。その間に、働く人の数と体力という問題があります。
240件の倒産が示す、人件費の重さ
東京商工リサーチによると、2026年度上半期、4月から9月の人手不足関連倒産は240件でした。前年同期の205件を上回り、年度上半期として調査開始以来最多となっています。
このうち人件費高騰を要因とするものは130件で、全体の54.1%を占めました。調査は負債1,000万円以上の倒産が対象です。人手不足には求人難や従業員の退職も含み、後継者難はこの集計から除かれています。
人を確保するために賃金を上げたい。一方で、売上や価格にすぐ反映できるとは限らない。働く人を大切にしたい気持ちと、支払いを続けるための現実を、同時に考える必要があります。
社長の頑張りだけで、埋め続けない
ここからは、報道を読んだ私の考えです。人が足りないとき、経営者が現場に入って埋め合わせるのは自然なことです。ただ、それが毎日の前提になると、休む時間や、先の経営を考える時間まで失われてしまいます。
私自身、がんの治療を経験し、働き続けられることの大切さを感じています。社長が病気になったとき、誰が何を引き継ぐのか。連絡先や仕事の手順が一人の頭の中にしかないと、周りの人も困ってしまいます。
まずは、利益を残せている仕事と、負担の大きい仕事を整理する。そして、担当者が休んだ場合の代わりを決めておく。小さな確認でも、続けられる体制を考える入口になります。
保険の前に、会社の実情を共有する
保険は、病気や事故など一定の条件に備える手段の一つです。人手不足や採算の問題そのものを解決するものではありません。だからこそ、契約の話を先に進めるより、会社にどんな負担があり、誰がどの役割を担っているかを聞くことが大切だと考えています。
売上があるかだけでなく、利益が残っているか、働く人が休めているか。その両方を確認しながら、会社を続けるための備えを考えていきたいと思います。
お客様を迎えられることと、無理なく迎え続けられること。忙しいときほど、その違いを一度立ち止まって考えてみませんか。
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト|年度上半期の「人手不足」倒産(2026年10月5日公表/10月12日確認)
- TBS NEWS DIG|人手不足に悩む飲食店の現場(サンデーモーニング)(2026年10月11日報道/10月12日確認)
※情報の基準日は2026年10月12日です。調査結果・報道内容と、筆者の考えを分けて記載しています。個別の会社の経営状態を判定するものではありません。保険の補償や給付は契約条件によって異なります。
