災害への備えは、建物と資金繰りを一緒に考える
熊本の被災事業者向け相談センターの開設から、災害後の資金繰りを考えます。修理費と、売上が戻るまでの支払いを分けて整理することが大切です。
建物を直せば、再開できるとは限らない
災害への備えというと、建物や設備の修理費を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、会社やお店が再び動き始めるまでには、別のお金も必要になります。売上が止まっていても、家賃や給与、借入れの返済が続くことがあるからです。
2026年10月9日、熊本商工会議所内に『熊本産業復興相談センター』が開設されました。内閣府・金融庁・中小企業庁の共同発表によると、令和8年熊本地震で被災した事業者の資金繰りなどについて、同日から相談対応を始めています。
新しい借入れを難しくする、既存の返済
今回の支援は、既存の借金が重く、新たな資金を調達しにくい『多重債務問題』への対応を含みます。復旧のために借入れが必要でも、これまでの返済を抱えたままでは、事業の再開が難しくなる場合があります。
発表では、中小機構と地域経済活性化支援機構が、地域金融機関などと復興支援ファンドを設立することも示されています。相談センターは支援策の紹介や事業計画・再生計画の策定を支え、債権買取などにつなげる仕組みです。誰でも受け取れる給付金や、全国向けの補助金公募ではありません。
対象は今回の熊本地震の被災事業者です。山口県の事業者が同じ制度を利用できると考えず、地域や災害ごとの公式窓口で対象条件を確かめる必要があります。
再開までの支払いを、一枚に書き出す
ここからは、発表をきっかけにした私の考えです。平時の備えとして、修理に必要なお金と、休業中に出ていくお金を分けて書き出してみると、会社の課題が見えやすくなります。
たとえば、売上が1か月止まったら、給与、家賃、借入返済、取引先への支払いはどうなるか。手元の預金でどこまで対応できるか。入金が遅れる場合は、いつ、誰へ相談するか。金額だけでなく、支払いの時期も並べてみてください。
設備が直っても、仕入先が動かない、従業員が出勤できない、お客様が戻らないといったことも考えられます。自社の復旧と、売上の回復にかかる時間を同じものと決めつけないことが、資金繰りを考える出発点です。
保険と資金調達には、それぞれの役割がある
損害保険でも、建物・設備への補償と、休業による損失への補償は、内容や条件が異なります。地震による損害をどう扱うかも、個別の契約確認が必要です。保険に入っていれば、災害後の支払いがすべて解決するとは限りません。
保険会社・代理店、金融機関、商工会議所などの連絡先を、経営者一人の記憶に頼らず共有しておきましょう。契約書類や事業に必要な記録を取り出せるようにすることも、相談を進める備えになります。
災害への備えは、『壊れたものを直す』ところから、その後も事業を続けられるところまで考えたいものです。現在の保険と手元資金、相談先を、普段のうちに整理しておきましょう。
- 内閣府・金融庁・中小企業庁|熊本産業復興相談センター及び復興支援ファンド(2026年10月9日公表/10月10日朝の確認情報)
※情報の基準日は2026年10月10日です。支援の対象、利用条件、手続きは公式窓口でご確認ください。制度の利用や融資、保険金の支払いを保証するものではありません。保険の補償は事故原因・契約内容等によって異なります。
