がんを職場に伝えるか迷ったとき――働き続けるための対話
病名をどこまで、誰に話すか。がんを経験した代表が、仕事への影響、相談先、休職中のお金を順番に考えます。
『言ったら仕事を失うかもしれない』という不安
2026年9月26日のABEMA NEWSの取材記事では、胃がんで胃を全摘した営業職の女性が、病名を伏せて働いた経験を語っています。トップ営業として積み重ねた機会や評価を失いたくない。同情されたくない。その思いは、仕事を大切にしてきた人ほど切実です。
私は中咽頭がんに準じるがんの手術、放射線治療、抗がん剤治療を受け、仕事に戻りました。治療中は食事も会話も思うようにいかず、退院したらすぐ以前と同じように働けるわけではないと実感しました。
取材された方と私の病状や職場環境は異なります。病名を公表するかどうかに、全員に共通する正解はありません。まず本人が何を守り、どの助けが必要かを考えることが出発点だと思います。
病名より先に、仕事への影響を整理する
国立がん研究センターのがん情報サービスは、治療期間、通院日、起こり得る副作用、現在の仕事内容について主治医に確認するよう案内しています。『週に何度の通院が必要か』『長時間の運転や立ち仕事は可能か』『食事や休憩をどう取るか』という具体的な話にすると、職場も配慮を考えやすくなります。
病名を全社員に伝える必要があるとは限りません。誰に、どこまで伝えるかは、本人の希望と必要な業務調整を踏まえて決めたいところです。人事担当者や信頼できる上司に、共有範囲と伝え方をあらかじめ確認しておく方法もあります。
治療予定は変わることがあります。最初から復職日や働き方を断定せず、主治医の意見を確かめながら見直す余地を残しましょう。
退職を決める前に、相談先とお金を確かめる
休職、短時間勤務、時間単位の休暇など、利用できる制度は勤務先によって異なります。加入する公的医療保険や雇用形態によって傷病手当金などの対象も変わるため、勤務先、保険者、社会保険労務士へ個別に確認してください。民間保険も、給付条件、免責期間、請求書類を証券と約款で確かめます。
病院の『がん相談支援センター』には、患者本人だけでなく家族も、仕事や医療費、生活費について相談できます。通院先以外のセンターも利用可能です。一人で退職を決める前に、まず相談して選択肢を並べてみてください。
会社が用意したいのは、相談できる入口
2026年度から、治療と仕事の両立支援は事業主の努力義務となりました。制度名を掲げるだけでは、本人が『評価に響くのでは』と感じて話せない場合があります。相談先、秘密を共有する範囲、主治医意見書の扱い、復職時の見直し方を事前に決めることが大切です。
小さな会社ほど、経営者と従業員の距離が近いものです。だからこそ『病名を言って』と迫るのではなく、『仕事で困ることがあれば相談できる』と伝える。残る社員の仕事量も含め、無理のない形を一緒に探したいと思います。
がんと診断されても、働き方は一つではありません。本人の気持ち、治療の見通し、職場で必要な調整、お金の備えを順番に確かめましょう。医療や就労は専門窓口へ、加入中の保険の確認は当社でもお手伝いします。
- ABEMA NEWS/テレ朝NEWS|がんを隠して働く女性の取材(2026年9月26日公表・9月28日確認)
- 国立がん研究センター|がんと仕事:働き方を考える(2026年9月28日確認)
- 厚生労働省|治療と仕事の両立について(2026年9月28日確認)
- 国立がん研究センター|周りの人に病気のことを伝える(2026年9月28日確認)
※治療や就労に必要な配慮、給付・保険金の対象は個別の状況と契約条件によって異なります。医療判断は主治医へ、勤務制度と公的給付は勤務先や保険者などへご相談ください。
